読書好きの少女だった私へ①
2月最初の週末。
天気が良く、暖かい日だった。
その日は同僚と一緒に私がかつて学生時代に住んでいた街に出かけた。
昼からブルガリアのオレンジワインを飲み、仕事の話やテレビの話など他愛ない話をした。
店を出る際に店員さんが出してくれた飴が入った籠の中から、個包装のピュレグミを見つけ、同僚に自慢した。
古本屋の前を通った。
古本屋というよりかは、万屋といったところ。
おばあさんが一人で切り盛りをしているその店の商品は、松本伊代のレコードやフランス製のお皿、年代物のコート、温泉街のお土産物など一貫性がなかった。
歩道に面した壁に埋め込まれた木製の本棚。
その横には赤と青の大きな文字で「古本・不用品 買取・引き取り」と書かれた、これまた木製の看板がかかっていた。
同僚と私はなんとなく立ちどまり、本棚を物色した。
割と最新の小説もあれば、「巨人軍優勝の記録」といった類の本も並んでいた。
「この本面白かった」
同僚が手渡してきた本を受け取り、裏表紙めくるとエンピツで「100」と書かれていた。
ほろ酔いだったこともあり、「じゃあ買う」と即決し、店内のおばあさんに100円玉を渡した。
その日は鞄を持っていなかったので、コートのポケットにそのまま小説をつっこんだ。